主体従の神木に体主霊従(ちしき)の果実を実らせ、
 「この果実喰ふべからず」
と厳命し、その性質のいかんを試みたまうた。ふたりは体慾にかられて、つひにその
厳命を犯し、神の怒りにふれた。
 これより世界は体主霊従の妖気発生し、神人界に邪悪分子の萌芽を見るにいたった
のである。
かくいふ時は、人あるひは言はむ。
 「神は全知全能にして知徳円満なり。なんぞ体主霊従の萌芽を刈りとり、さらに霊
 主体従の人体の祖を改造せざりしや。体主霊従の祖を何ゆゑ放任し、もって邪
 悪の世界をつくり、みづからその処置に困むや。ここにいたりて吾人は神の存在と、
 神力を疑はざるを得じ」
とは、実に巧妙にしてもっとも至極な議論である。
 されど神明には、毫末の依估なく、逆行的神業なし。一度手を降したる神業は昨日